アニオン性ポリアクリルアミド（PAM）の線香配合により、生産効率と製品品質の大幅な向上が期待できます。強力なバインダーとして機能するPAMは、線香の形状保持性と理想的な燃焼特性を両立させます。ただし、効果を引き出すにはポリマーの取り扱い方がカギ。本稿では、国内工場でも再現しやすい工程別リズムとノウハウを詳解します。

第1段階：製品特性を把握する
アニオン性PAMは、顆粒・粉末のいずれかの形態の水溶性高分子です。線香用途では主に増粘・結合剤として活用されます。選択時は分子量、加水分解度、溶解性を必須チェック項目に加え、粘度と結着力のバランスが取れた専用品グレードを選定しましょう。

第2段階：溶解のコツ
まず注意すべきは水質と濃度管理。水道水のカルシウム分がゲルを詰まらせる原因になるため、精製水を推奨します。目標濃度は0.1～0.5%。粉末を天びんで秤取り、水に少量ずつなじませながら投入するとダマの発生を防げます。攪拌は100～300 rpmの低速で、急激なせん断はポリマー鎖を切断して効果を低下させます。40℃程度の温水なら溶解時間を短縮できますが、60℃を超えると変性の恐れがありますので注意が必要です。

第3段階：配合への組み込み
十分に粘度が出たPAM溶液を、香木粉・木粉・燃焼助剤などの乾燥原料と合流させます。手早く均一になるよう、溶液を２～３回に分けて加える「分割投入法」が効果的。原料温度が高すぎてもゲル化が不均一になるため、室温付近に調整してから作業を進めてください。

第4段階：練り・押出成形
目標は「手触りしっかり・押出れらくらく」のペーストです。PAM溶液の比率は配合デザインに応じて微調整しますが、押出圧力が急増する場合は溶存量過多のサインです。押出後もPAMの高粘度効果でねじれや潰れを抑え、製品としての完成度が格段に向上します。

第5段階：乾燥と熟成
押出した線香は温度25～35℃、湿度50％程度の環境で徐乾させます。PAMの保水作用により乾燥割れのリスクが低減する一方、内部水分を確実に飛ばすことを意識してください。完全乾燥後、数日間の常温熟成を施すと燃焼ムラがさらに軽減されます。

現場で役立つTIPS

  • 保管：未開封なら涼乾燥所に保管し、開封後は脱湿剤とともに密閉して湿気をシャットアウト。
  • 溶液寿命：溶解後はできるだけ当日中に使用。長時間放置すると徐々に加水分解が進み、粘度が下がります。
  • 薬剤との相性：防腐剤や着色料を併用する場合、事前に小ロットでゲル化テストを実施。
  • サプライヤーとの連携：グレード選択に悩んだら、原料メーカーに線香配合のベストマッチをアドバイスしてもらいましょう。

上記手順を押さえることで、安定した高品質線香の量産と、生産ロス／不良率の削減を同時に実現できます。