インシリコで切り拓くがん治療の突破口 ─ 2,2'-ビピリジン誘導体によるAKT・BRAF標的化 ─
革新的ながん治療薬を創出するため、コンピューターを駆使した創薬アプローチが注目を集めている。この潮流のなか、2,2'-ビピリジン系化合物に焦点を当てた最新研究が、分子ドッキングを中心とした先端インシリコ技術を用いて、がん進展を司る中核タンパク質 AKT と BRAF の阻害可能性を分子レベルで解き明かした。
PI3K/AKT/mTOR と RAS-BRAF-ERK の両シグナル伝達経路は、多種のがんで恒常的に活性化しており、がん細胞の生存・増殖を維持する要因となっている。PI3K/AKT/mTOR 経路の要であるキナーゼ AKT は細胞の生存・代謝を調節し、RAS/RAF/MEK/ERK 経路に位置するキナーゼ BRAF は細胞増殖や分化・生存に関与する。したがって、これら経路を選択的に抑制することはがん新薬開発における最重要課題とされている。
分子ドッキングは、試験化合物(リガンド)とタンパク質(標的)との結合様式をコンピュータ上でシミュレートする手法だ。今回の研究は、2,2'-ビピリジン誘導体を AKT の ATP 結合部位および BRAF の活性部位に仮想的に配置し、結合エネルギーならびに水素結合・疎水相互作用を詳細に評価。結果、シリーズ化合物が両タンパク質に対して低い結合エネルギー、すなわち高親和性を示し、標的酵素の機能を阻害しうることを予測した。
これらのインシリコ解析の成果は、すでに確認されている in vitro 抗がん活性をも強力に裏付ける。AKT・BRAF の活性を遮断することでがん細胞の生存シグナル網が崩壊し、アポトーシスが誘導されるというメカニズムが明確になった。次なる実験最適化の道筋を照らす今回の知見は、次世代 AKT/BRAF 併用阻害薬の合理的創製における基盤となるはずだ。
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「次なる実験最適化の道筋を照らす今回の知見は、次世代 AKT/BRAF 併用阻害薬の合理的創製における基盤となるはずだ。」
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「この潮流のなか、2,2'-ビピリジン系化合物に焦点を当てた最新研究が、分子ドッキングを中心とした先端インシリコ技術を用いて、がん進展を司る中核タンパク質 AKT と BRAF の阻害可能性を分子レベルで解き明かした。」