キチオソオリゴ糖(COS)粉末は、カニやエビなどの殻キチンを由来とする植物活性剤として、近年日本の農業現場でも注目を集めている。主にキチン粉の分解精製で得られる農業グレード製品で、種子から収穫まで作物のライフサイクル全体をサポートする。

COSの最大の特長は、「誘導体防御分子」と呼ばれる自然な防御物質を作物自身に発現させる点にある。葉面散布あるいは土壌混和で施用すると、根葉ともに抗真菌性たんぱく質や抗菌物質の合成が促進され、カビ・細菌・害虫への耐性を高める。この「植物本来の力」を引き出すメカニズムにより、化学農薬の使用量を抑制しながら病害虫防除が可能となり、持続可能な生産体系へ貢献する。

またCOSは養分吸収効率を格段に高める。微量要素を含めた肥料をより効率的に取り込み、根の発達を促し、茎葉の充実と収量増加をもたらす。水溶性粉末タイプのため、希釈・散布が簡便で、作物への均一吸収を実現。葉面散布では光合成活性の向上、土壌処理では根圏微生物バランスの改善も確認されている。

種子処理への活用も高い効果を示す。播種前にCOSの低濃度溶液で種をまぶす(シードフィーディング)ことで発芽率向上と初期生育促進を図れ、土壌病原菌や低温などの初期ストレスから幼苗を守る。こうした生育段階を通じたホルティ支援により、病害に強く栄養効率の高い農作体系が実現できる。キチン系バイオポリマーの農業応用は、環境保全型農業で次世代技術への架け橋となる。