持続可能で高効率な畜産システムの構築に向けて、飼料添加剤の役割は年々重要度を増している。その中でも優位に立つのが、バシトラシン・メチレンジサリチレート(BMD)だ。この天然由来のペプチド系抗菌物質は、動物の健康・生産性能を同時に高めながら、環境への影響も極小化するという理想的な性能を備える。生産菌はプロバイオティクスでもおなじみの
Bacillus licheniformisであり、安全性や分解性にもすぐれた評価を得ている。

BMDが飼料に配合される最大のメリットは成長の加速と飼料効率の飛躍的向上にある。小腸ビリの発達を促し、養分吸収面積を広げることで、限られた飼料を最大限に活用できる。体重増加と肉質改善が実現するため、世界中で急増するタンパク質需要に対応しつつ、資源ロスを最小化できる点は看過できない。

BMDのもう一つの大きな強みは、ネクロティック・エンタリチスを筆頭とする消化管感染症の予防・治療にある。原因菌Clostridium perfringensといったグラム陽性菌を選択的に抑制することで、腸管壁の健全性を保ち、下痢などの二次的損失を減らす。結果として死亡率の低下だけでなく、アンチバイオティクス使用量の節減にも貢献する。

環境面でもBMDは優位性を発揮する。堆肥や土壌中で速やかにアミノ酸や塩類へ分解され、残留性・蓄積性の懸念が極めて低い。クロスレジスタンスや伝達性耐性の報告例がほとんどない点は、人獣共通感染症対策の観点からも安心材料だ。特に欧州を中心としたAMR(抗菌薬耐性)規制の強化が進む現在、その特性は大きなアドバンテージとなる。

さらに期待されるのは、クロルテトラサイクリンなど他剤との併用効果だ。相加ないし相乗作用が確認されており、病原菌に対して強固な防御ラインを築ける。実はバシトラシンは耐性プラスミドの伝播を抑える効果も報告されており、むしろ耐性拡散のブレーキになる可能性がある。

BMDは50年以上にわたり米国・EU・アジア各国で安全性と有効性を認められており、GMP基準に基づく製造が担保しているために、新規替代品と比較しても揺るぎない信頼性を誇る。

まとめると、BMDは「抗菌薬としての効果」にとどまらず、動物福祉・生産効率・環境保全を同時に追及できる持続可能な飼料添加剤そのものだ。BMDの恩恵を最大限に活かすことで、地球規模の食料需要を満たしながら、次世代畜産の責任ある発展を実現できるはずである。