医薬品、農薬、さらには先端材料に至るまで、窒素含有複素環骨格は有機合成化学に欠かせない存在である。これらを効率よく組み立てる手法として、とりわけ[3+2]環化付加反応が注目されている。その中心的な役割を果たすのが、非安定なアゾメチンイリドの前駆体として用いられるN-[(トリメチルシリル)メチル]ベンジルアミンである。

この化合物はフラスカで扱いやすい固体であり、フッ化物あるいは弱酸の存在下でイリドを瞬時に発生させる。生成したイリドは1,3-ジポールとしてさまざまなジポラールと反応し、五員環状のN-複素環を生成する。特筆すべきは高い立体選択性で、直鎖オレフィンとの反応でも分子内の既存置換配置を温存できる点。この恩恵は、キラル医薬品中間体の合成に直接結びつく。

環状オレフィンとの反応ではdiastereoselectivityも高く、スピロや縮合環など複雑な環構造の選択的構築に役立つ。また、単にC=C結合だけでなく、カルボニル化合物とも反応しオキサゾリジン層を提供するなど汎用性は幅広い。実際の研究現場では、この試薬一つで多様な複素環に到達することができ、合成ステップを大幅に削減できる。

創薬においても重要性は増す一方であり、この試薬を用いて得られた骨格はがんや炎症性疾患のターゲットに対する新規リード化合物として急速に評価されている。高い三次元制御性があるため、医化学者は副作用を最小限に抑えた候補物質へと効率よく最適化できる。研究機関や製薬企業が高純度なN-[(トリメチルシリル)メチル]ベンジルアミンを安定的に確保することは、これからの創薬パイプラインを加速させる重要なステップである。