製紙業界はいま、「最高の品質」と「限界の効率」を求めて次なる突破口を模索している。その担い手として注目されるのがカルボキシメチルセルロース(CMC)である。天然セルロース由来の親水性高分子であり、パルプ工程から仕上げ塗工まで幅広く活用される“万能補強材”として認識されている。

CMCが実現する3つの大きな価値

最大の特徴は、保持性・分散性・皮膜形成性が高次元でバランスしている点。これによりレオロジー調整剤・結合剤・安定剤の三役を一台で果たし、紙自体の強化だけでなく操業効率の飛躍的向上へも直結する。

まず、塗工液への配合では保水力が大幅にアップし、水系接着剤の過度な紙への浸透を防ぐ。結果、塗膜が均一になり、光沢向上とともにプリント適性が一段と増す。またCMCは「擬塑性流体」のため高せん断域で粘度が急激に低下。高速塗工機や高固体成分塗料との親和性が高く、「オレンジピール現象」も抑制できる。

次に、表面サイジング剤としてのCMCは紙の剛度・平滑性・表面強度を飛躍的に向上。油透過を抑えカールを防ぐため、オフセット印刷やデジタル印刷に最適な紙質に仕上がる。

さらに、ウェットエンドでの添加では繊維間結合力を高め、フィラー・微細繊維の流失を抑制。ゆえに排水性も改善され、原料歩留まりアップ=コスト削減へとつながる。

サステナビリティへの貢献

CMCは100%バイオマス由来で生分解性・再パルプ性に優れる。紙の循環型経済を加速させ、CO₂削減効果も見込める。高品質CMCを安定的に確保することは、持続可能な製紙戦略の中核となる。

塗工からサイジング、ウェットエンドまで一貫して展開できるCMCは、もはや「添加剤」という枠を超えた戦略的パートナー。今後も進化を続ける製紙業界において、より良い紙をより環境負荷の低い方法で作る鍵を握る——それがカルボキシメチルセルロースである。