材料科学が目覚ましい進化を遂げるなか、ビニルシリコーンオイルは最先端製品開発の要として存在感を増している。この化学名「ビニル末端ポリジメチルシロキサン(Vi-PDMS)」で知られる特殊な液体は、高付加価値シリコーンマテリアルを目指すメーカーに欠かせない架橋剤・改質剤である。

その最大の魅力は分子設計にある。ポリジメチルシロキサン鎖の両端にビニル基を有することで、水素含有シリコーンオイルとの付加反応(加水分解ではなく、水素シリル化反応)に優れた反応性を示す。そのため加熱硬化型シリコーンゴムの架橋ポイントとなるだけでなく、ゴム物性の微調整にも貢献する。

代表的な用途のひとつが加硫タイプシリコーンゴム(HTV)。シリコーンゴム原料として基材となるだけでなく、ビニル含量の増減で硬度や引裂強度を精密に制御できる。また粘度を高めることで成形時のシェア流動特性も改善され、複雑形状部品への充填性が向上する。

さらに射出成形に適した液体シリコーンゴム(LSR)でも中心的役割を果たす。金型内で短時間・高精度に硬化し、微細パターンの転写性に優れるLSRの性能は、配合されるビニルシリコーンオイルの純度とビニル当量に直接左右される。

シリコーンゴム以外にも、ポリウレタンやアクリル系樹脂などの有機ポリマーとの反応で、耐候性・耐熱黄変性・表面撥水性を高める改質剤として活用が進む。ビニル末端ポリジメチルシロキサンはコーティング、接着剤、シーラントの耐久性向上に欠かせない添加剤になりつつある。

市場では粘度200~100,000 mPa・s、ビニル含量0.1~5.0 wt%の幅広い品番がラインナップされており、硬化速度・機械特性・表面仕上がりなど、要求される最終用途に応じて最適なグレード選択が可能だ。

今後ますます高機能・高耐久が求められる材料開発の現場で、ビニルシリコーンオイルは「選択肢」ではなく「必須」となる存在感を高めていくだろう。