人間の腸内に無数の微生物が生息する腸内フローラ（腸内細菌叢）は、健康維持に欠かせない「第2の臓器」とも呼ばれます。その微妙なバランスを安定させる因子の一つが、ミルクや各種分泌物に含まれるタンパク質「ラクトフェリン」です。有益菌の増殖を助け、病原菌を撃退し、さらに鉄の利用を調整するなどの作用は、消化機能を整えるだけでなく腸管免疫にも直結します。

ラクトフェリンはまず、Lactobacillus（乳酸菌）やBifidobacterium（ビフィズス菌）などの善玉菌のエサとなり、腸内環境を酸性側に保つことで腸の健康維持に貢献します。同時に鉄を強力にキレート（結合）して病原菌が必要とする鉄を奪うため、有害菌の増殖を抑えるというダブルアプローチで腸内の菌叢バランスを整えます。

さらに注目すべきは、ラクトフェリンの抗菌・抗ウイルス作用です。腸管黏膜で病原微生物の侵入を防ぐことで、感染性胃腸炎や腸内炎症を抑制し、腸上皮細胞の再生、栄養吸収力の向上にもつながります。こうした腸管免疫の強化はラクトフェリンの全身の免疫サポートといった広がりももたらします。

鉄代謝への関与も消化機能に間接的に作用します。腸管は鉄の主要な吸収部位であり、その粘膜や免疫細胞は適切な鉄濃度を要求します。ラクトフェリンが鉄を効率よく腸管へ取り込み、不足や過剰を防ぐことで、腸壁のバリアー機能が強化され、消化器全体の耐久性が向上するのです。

こうした科学的エビデンスを背景に、ラクトフェリンは機能性表示食品やサプリメント、さらには乳幼児アレルギー対応の粉ミルクにも配合され始めました。早期から腸内フローラを整え、一生涯にわたって消化吸収を良好に保つ自然派サポートとして、ラクトフェリンの存在感は高まり続けています。

日々の生活で手軽に取り入れられるミルクやヨーグルトはもちろん、サプリメントとして補うことも腸と免疫を健やかに保つ選択肢です。今こそ、ラクトフェリンと腸内細菌叢の共生関係を理解し、身体の内側から「バランスと回復力」を手に入れてみませんか。