植物に含まれるポリフェノール「エラギタンニン」は優れた抗酸化力を持つ一方、消化吸収されにくいという課題を抱えていた。しかし腸内細菌がこれを代謝し、生体内利用率の高い「ウロリシン群（urolithins）」に変換することで、本来のパワーが解き放たれる。研究が最も進んでいるのは、その中核を担う「ウロリシンA（UA）」だ。

UAの最大の特徴は、ミトコンドリアの質を高める点にある。古くなり機能が低下したミトコンドリアを選択的に分解・除去する「ミトファジー（mitophagy）」を活性化させ、細胞内のエネルギー工場を刷新する。これによりATP生産効率が向上し、慢性的な疲労感や加齢に伴う機能低下の抑制が期待されている。

臨床試験では、筋持久力と瞬発力の改善も確認されている。ミトコンドリアの若返りによって筋細胞へのエネルギー供給が円滑になり、運動パフォーマンスの向上や加齢性筋量減少の緩和につながる。競技者はもちろん、健康寿命延伸を目指す幅広い層から注目を集めている。

さらにUAには、活性酸素消去と慢性炎症抑制のダブル効果があることが報告されている。老化や生活習慣病の根源となる酸化ストレスを軽減し、全身の恒常性維持を支援する。結果として自然治癒力の向上や未病の改善へと繋がると考えられる。

ただしUAの体内濃度は個人差が大きい。腸内フローラの種類によりエラギタンニンからUAへの転換率は10％未満の人もいるため、食事摂取だけでは効果が不安定になりがちだ。研究開発が進む「直接補給型」のUAサプリメントは、個々の腸内環境に左右されない安定した血中濃度を可能にする。

腸内細菌叢と健康の関係性が明らかになるなか、ウロリシンAのような“ポストバイオティクス代謝物”は、新しい予防医学アプローチの切り口となる。継続的な摂取により、細胞レベルで若々しさをキープし、健やかなライフステージを送る一助になるかもしれない。