ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド（通称 NAD+）は、細胞のエネルギー生成を司る補酵素として、健康維持に欠かせない存在です。しかし加齢とともに体内レベルは低下し、活力の衰えや修復機能の鈍化を招くこともあります。そこで、自然の力でNAD+をサポートする実践的アプローチを整理しました。

食事面で重視したいのは「前駆体」です。身体はナイアシン（ビタミンB3）やトリプトファンといった成分からNAD+を合成します。鶏むね肉、七面鳥、赤身の牛肉は両方の栄養素をバランスよく含む代表的な選択肢。また、サーモン、マグロ、イワシといった青魚にはナイアシンのほか、細胞膜を守るオメガ3脂肪酸も豊富です。ひまわりの種、チャアシード、かぼちゃの種といったナッツ＆シード類も手軽なNAD+サポーターですし、玄米やオートミールといった全粒穀物はナイアシンとB群ビタミンを同時に補えます。

次に注目すべきは日常の「習慣」。まず適度な運動は、NAD+産生を刺激する最強のトリガーのひとつです。有酸素運動・インターバルトレーニングいずれも、細胞のエネルギー需要が増大するのを契機に合成が促進されます。また、断続的ファスティングやタイム・レストリクテッド・イーティングも実践が進んでいます。空腹時や限定進食帯に立ち上がるミイルドなストレスがSIRT1などのたんぱく質を活性化し、結果としてNAD+産生を後押しするメカニズムです。

さらに忘れてはならないのが体内時計の整備です。朝の日光浴で昼夜リズムをリセットすることで、NAD+合成に関連する遺伝子発現も最適化されます。これらの生活習慣が軸となる一方、ナイアシンリボシド（NR）やニコチンアミドモノヌクレオチド（NMN）などのサプリメント摂取も研究段階にありますが、いかなるサポートも医療専門家と相談したうえで導入することをおすすめします。