PVC（ポリ塩化ビニル）の加工は、添加剤によって製品特性や生産効率が大きく左右される複雑な工程である。重要な添加剤のひとつがポリエチレン樹脂ワックス（PEワックス）だ。本稿では内部・外部の二層型潤滑効果をもつPEワックスが、PVCの品質と加工性にどのように貢献するかを詳しく見ていく。

内部潤滑によるメリット
PEワックスは重合体分子鎖間の摩擦を軽減し、溶融粘度を下げながら溶融強度を保持。熱安定性も向上させ、押出や射出成形での流れをスムーズにすることで、熱劣化リスクを減らし安定生産を実現する。

外部潤滑によるメリット
成形機や金型の熱い金属面に溶融PVCが密着しにくくなり、離型性が向上。表面疵や焼き付きを抑制し、平滑で光沢のある仕上がりを得るため、廃品率削減にもつながる。

さらなる付加価値
ゲル化を促進することで材料物性の均一化を図り、PVCパイプやプロファイルなど寸法精度・外観品質が求められる用途で威力を発揮する。また、PVC樹脂との相容性が高く、高温工程でも劣化しにくいため、配合における自由度が大きい。

選定のポイント
PEワックスは分子量や酸価などで複数のグレードが用意されており、目標とする押出スループットの向上、PVCシートの高光沢化、パイプの連続生産安定化など、用途に応じて最適なタイプと添加量を設計する必要がある。

まとめ
内部・外部の二重潤滑で加工効率と品質を同時に高め、生産コストを抑えるPEワックスは、PVC業界における必須添加剤といえる。多様なグレードを理解し、成形条件と用途に合わせて活用することで、競争優位性を維持できる。