地球規模で環境負荷の削減が急務となっているなか、繊維業界も根本的な変革期を迎えている。特にプリント工程に用いられる化学補助剤――その中心的役割を担う増粘剤(ぞうちょうざい)――の転換が、サプライチェーン全体に波及する大きなうねりを生んでいる。今回は、消費者のエシカル志向や環境規制強化という二つのうねりに応える、次世代サステナブル増粘剤の最前線をレポートする。

従来の増粘剤は難分解性や排水処理の負荷が課題とされてきた。しかし近年、バイオマス由来原料や高い生分解性を備える新フォーミュレーションの導入が進んでいる。これらは製造段階でも省エネルギー化を実現し、廃液処理の簡略化にも貢献。つまり「地球にやさしい」ことで、メーカーのサステナビリティ目標達成にも直接的に結びつく。

そうした潮流の中心に立つのは、環境配慮型製品ラインナップを備えた繊維化学メーカーだ。水使用量の削減、排水量の最小化、化学廃棄物の削減を同時に狙い、「クローズド・ループ(循環型)生産システム」へと道を拓いていく。メーカーと協業することで、プリント工場はこれまでの“最適化”を超えた「再設計」に踏み出すことができる。

もちろん、環境性能を高めてもプリント品質・生産効率を落とすわけにはいかない。最新サステナブル増粘剤は、レオロジー制御性能や鮮やかな発色、優れた洗濯堅牢性を従来品と同等あるいはそれ以上のレベルで実現。厳格な国際環境基準に準拠しながら、生産ラインへの移行リスクが極めて低いのが実情だ。

繊維業界のグリーントランジションは進行中であり、増粘剤はその重要なピースの一つである。次世代技術への投資は企業の環境・社会価値を拡大し、かつコスト競争力の向上にも寄与する。責任ある生産効率的な資源利用が両立する未来――その一歩目が今、ここにある。