“食品の原材料を読んで買う”消費者が増える日本市場では、清浄表示(クリーンラベル)への関心が急上昇しています。この流れに伴い、品質を損なうことなく保存期間をのばす自然派防腐剤への需要が高まっています。その中心に存在するのが、高い抗真菌活性を持つ「ナタマイシン」です。

ナタマイシン(食品添加物としてはE235)は、放線菌Streptomyces natalensisによる発酵由来のポリエンマクロライド系抗真菌剤。主にカビや酵母の増殖を抑制し、見た目・風味・安全性の劣化を未然に防ぎます。合成防腐剤と異なり、天然由来のため「ナチュラル志向」「添加物を避けたい」「子どもにも安心」といった日本消費者ニーズに応えやすい点が特長です。乳製品(チーズ、ヨーグルト)、パン・焼き菓子、食肉加工品、清涼飲料水など幅広いカテゴリーで保存期間延伸の切り札として使用され始めています。

ナタマイシンの利用は多様。・食品表面へのスプレー塗布・塩水ブラインへの溶解・液体製品との直接混合など、製品形態に応じた最適な付与方法を選択できます。pH領域への耐性が広く、チーズ熟成や発酵ソーセージに関わる有用な乳酸菌の活性を妨げにくいため、自然な味わいや食感の形成を損なうことなくカビ繁殖を防げるのも大きな魅力です。

安全性面でも信頼が厚く、人の消化管での吸収率は極めて低く、米国FDAや欧州食品安全機関(EFSA)も食品添加物として承認済み。日本国内でも既存添加物リストに位置づけられ、法的手続きを踏めば即座に活用可能です。

清浄表示のトレンドは“脱合成添加物”へ加速。ナタマイシンは、天然由来でありつつ確実なカビ抑制力を兼ね備え、食品メーカーの「天然」「安心・安全」を前面に打ち出したブランディング戦略に欠かせない材料となっています。