いわゆる「高吸水性ポリマー(SAP)」として知られるポリアクリル酸ナトリウムは、吸水・保水能力が桁違いに高いことを特徴とする革新的材料である。従来のセルロースなどの吸収材では到底実現できない水量を保持できることから、民生品から工業用途に至るまで、あらゆる現場で欠かせない存在へと進化した。

その化学構造はポリアクリル酸のナトリウム塩であり、電荷をもつ分子鎖が水分子とイオン結合することで均一で安定したゼルを形成。セルロースと比べて数十倍から数百倍の液漏れしにくいゲルが得られるため、製品の耐久性も格段に向上する。工業的にポリアクリル酸ナトリウムを検討する際は、吸水倍率だけではなく、ゼル強度や残留単体量などが選定のポイントとなる。

最も身近な用途は紙おむつや生理用ナプキン、軽失禁パッドといった使い捨て衛生資材だ。瞬時に大量の体液をゼル化し、肌をさらにドライに保つことでカブレリスクを低減し、消費者に高い信頼を得ている。その他にも、保冷剤では水漏れを防止し長時間の冷却性能を維持。農業向けには土壌に練り込むことで灌漑水量を大幅に削減できる貯水材として注目を集めている。こうした多様なニーズに応じ、グレードや粒度、残留塩類など仕様選びが重要になる。

さらに、浸水時に最短数秒で膨張して扉の隙間や出入口を止水する防災バッグ、医療用の保水性ゲル、エンタメ用人工雪など、アイデア次第で応用は無限に拡がる。今後も用途開発が進むことで、ポリアクリル酸ナトリウム市場は安定的に伸長すると見込まれる。