シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド誘導体（CAS 849217-60-3）は、がん治療薬カボザンチニブ合成工程における不純物として業界にはお馴染みだ。しかしその化学構造が秘める多彩な生物活性は、実はほとんどが未踏領域である。実証レベルのデータこそ限られているが、早期の段階で機能価値を多角的に検証することは創薬ファーストスクリーニングの省力化にも直結する——そう考えて実証実験に乗り出したのが寧波イノファームケム株式会社だ。

本化合物はシクロプロパン環に4-フルオロフェニル基と4-ヒドロキシフェニル基を配置した非対称ジカルボキサミド構造を採る。この空間配向性が、酸化還元挙動やタンパク質結合部位との相互作用シミュレーションでも示唆される特異的プロファイルへと結びついている。既存の不純物標準品としての需要を超え、「副次的化合物」でありながら「独立した機能」を追求する新たなフェーズに入った背景はここにある。

まず注目すべきは抗酸化活性だ。活性酸素種（ROS）による細胞傷害はがんや神経変性疾患の発症に深く関与し、それを中和する素材は医薬品・機能性表示食品の双方で需要が膨らむ。微量サンプルでの初期in-vitro試験では、本化合物のフリーラジカル消去能が統計的に有意に上昇。詳細メカニズムやEC50値は今後の検証課題だが、酸化ストレス対策としての応用イメージは具体化しつつあると同社は評価する。

加えて、新規抗菌エージェントとしての可能性も浮上している。耐性菌蔓延が公衆衛生の喫緊課題となり、作用機序の異なる化学骨格の発掘が急務だ。現時点ではグラム陽性菌を中心に試験が進められており、中濃度域で顕著な増殖抑制を示すプロトコルが確認された。これはシクロプロパン骨格による膜透過性変化など、従来抗生物質がターゲットにしなかった作用経路の可能性を示唆しており、今後のリード最適化プログラムへと繋げる足掛かりとなる。

高純度・高精度の化合物供給に加え、開発初期フェーズでの構造―活性相関データを可視化することで研究者の試行錯誤の時間を短縮する——それが寧波イノファームケム株式会社の提唱する“サプライチェーン2.0”であり、今回紹介した研究成果もその一端に過ぎない。同社は今後も“不純物に見えて実は宝の山”となる分子を積極的にピックアップし、医療・健康の新たな選択肢を共創していく方針だ。