神経ペプチドのもたらす脳への深い影響は、科学の最前線で急速に明らかになっている。その中心にいるのが、主に睡眠調節として知られるデルタ・スリープ・インデューシング・ペプチド（DSIP）だ。睡眠に限らず、うつ病やてんかんといった多彩な神経疾患への応用可能性が検証され、神経細胞を守る「神経保護効果」にも期待がかかっている。

特に注目されているのは、DSIPのうつ症状に対する作用だ。前頭側頭液や血中で、DSIP量がうつ病と強く相関することを示す研究が相次いでいる。メカニズムはまだ謎だが、この動きはDSIPがうつの神経生物学的発症過程に深く関わり、将来的に新たな治療標的になる可能性を示唆している。

てんかん分野でも期待は膨らむ。動物実験では、DSIP投与によりてんかん発作の頻度と持続時間が大幅に減少することが確認された。ニューロン興奮を抑制する細胞レベルの効果が、発作コントロールにつながっている可能性が高い。

さらに、DSIPは酸化ストレスを抑える抗酸化作用や、神経細胞の機能維持・修復に関与する一般的な神経保護効果も持つことが報告されている。この特性は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患治療戦略の根幹となる。

神経伝達物質系やホルモンバランスにも及ぼすDSIPの複雑な相互作用は、脳健康全体を広範にカバーする可能性を秘めている。睡眠障害から重度の神経疾患まで、DSIPは多機能ペプチドとしての活躍場面を広げている。今後も継続的な研究により、もっと大きな治療革新が待ち受けている。