ハペルジンAは神経を護るだけでなく、病気そのものに働きかける可能性がある
加齢や神経変性疾患によって脳は絶えずダメージを受けやすくなるが、天然アルカロイドであるハペルジンAは、単なる対症療法を超えて神経保護と病態修復の両輪で有望視されている。注目すべきは、その多彩な細胞レベルの働きだ。
酸化ストレスから神経をシールド
活性酸素と抗酸化システムのバランスが崩れる酸化ストレスは、ニューロンの損傷を加速する主要因である。ハペルジンAはグルタチオンペルオキシダーやSOD、カタラーゼなどの抗酸化酵素を高め、酸化ダメージマーカーのマロンジアルデヒドを低下させる“二刀流”で神経細胞を守る。
細胞死のスイッチを遮断
ニューロンの命運を左右するアポトーシス(プログラム細胞死)は、カスパーゼ-3を筆頭としたシグナルカスケードで進行する。ハペルジンAはこのカスパーゼ-3の活性化を抑制し、抗アポトーシス遺伝子Bcl-2を亢進、致死遺伝子Bax・p53を抑制することで、過剰なニューロン死を防ぐ。
ミトコンドリア機能の再生
エネルギー工場であるミトコンドリアの破綻は多くの神経疾患の共通項だ。アミロイド-βペプチドによるミトコンドリア損傷に対し、ハペルジンAはATP産生を改善し、ROSの生成を抑えることで、神経保護効果の重要な拠点を維持する。
アルツハイマー病へのアプローチを再定義
既知のアセチルコリンエステラーゼ阻害に加え、NMDA受容体拮抗による興奮毒性軽減、神経成長因子(NGF)分泌の増大、アミロイド前駆体蛋白(APP)の非アミロイド経路への処理誘導、さらに鉄蓄積の抑制という新規メカニズムが立ち上がっている。ハペルジンAは疾患修復候補として症例進行そのものに働きかける可能性を秘めている。
脳を守り、疾患の歯車を逆転させる――ハペルジンAの神経保護効果を裏付ける研究が蓄積されるにつれ、天然由来分子がもたらす「根本治療」の道筋が鮮明になってきている。
視点と洞察
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