肥満治療の最前線で、3つの新薬が大きな話題となっている。すでに市販されているGLP-1作動薬オゼンピック(セマグルチド)と、GIP/GLP-1デュアルアゴニストのマウンヒロ(チルゼパチド)。その陰で、エリ・リリーが開発する「レタトルチド」は三重受容体アゴニストという破格のアプローチで早期臨床試験で注目を集めている。本稿では、それぞれの作用メカニズム、減量効果、そしてレタトルチドの最新臨床試験結果を中心に詳しく検証する。

オゼンピック(セマグルチド)
もともと2型糖尿病治療薬として承認されたGLP-1受容体アゴニスト。インスリン分泌を促しながら中枢に作用し、空腹感を抑え満腹感を高めることで減量を促進する。

マウンヒロ(チルゼパチド)
GLP-1に加え糖依存性インスリン遊離ポリペプチド(GIP)受容体も同時に活性化するデュアルタイプ。二つの経路で血糖値と体重をより強力にコントロールするため、単剤のGLP-1薬剤を超える効果が期待されている。

レタトルチド
GLP-1、GIP、そしてグルカゴンの三重受容体アゴニストとして動作。摂取カロリー抑制に加え、褐色脂肪組織を活性化して産熱作用を上昇させる。臨床試験ではレタトルチド対マウンヒロレタトルチド対オゼンピックの比較で、既存薬より大きな体重減少を示す早期データが報告されている。24週間で15~17%の減量が達成された症例もあるという。

その革新的な「トリプルG(GLP-1/GIP/グルカゴン)」機序により、レタトルチドは摂取抑制と消費促進の2つのシナジーを得ることができ、肥満の根本的かつ効果的な治療につながると期待されている。肥満治療市場で次のスタンダードになる可能性が高く、レタトルチドの承認見通しや薬価にも注目が集まっている。