年齢を重ねることは避けられませんが、細胞レベルの老化スピードは私たち次第で変えられる。最新研究が注目するのは、ポメグラネートやベリー類に含まれるエラジタニンを腸内細菌が変換して生み出す代謝物——ウロリシンB(UB)である。

老化の根本原因の一つである酸化ストレス。活性酸素種(ROS)の過剰が細胞のDNAやタンパク質を傷つけ、機能低下を招く。ウロリシンBはこのROSを直接除去し、脳を含む全身の組織を保護する強力な抗酸化作用を示す。また、老化で乱れがちなアポトーシス(プログラム細胞死)を適切にコントロールし、神経細胞の死滅を防ぐことで組織の若さ維持に貢献する。

動物実験でも、ウロリシンB投与群では認知機能テストスコアが有意に向上。脳神経を守るPI3K/Akt経路の活性化、ミトコンドリア機能の改善が確認されている。さらに興味深いのは、腸内フローラの多様性が個人ごとの生成量に差を生じ、それがUBの効果にも影響すること。腸と脳を結ぶ「腸脳相関」の重要性が改めて浮き彫りになった。

今後の臨床応用に向けて、エラジタニンを多く含む果実を日常に取り入れる食事法や、安全性が確認されたUBサプリメント活用など、自然派アンチエイジング戦略の選択肢が広がろうとしている。細胞そのものを若返らせるUB——自然が育んだロングエビジティの鍵は、もはや私たちの腸の中にありそうだ。