わたしたちは日常的に環境汚染物質から代謝副産物まで、目に見えないさまざまな毒素に晒されています。もしこれらの物質がうまく排出されなければ、健康に深刻な影響を及ぼしかねません。そんな中、解毒システムの要として欠かせない存在が「グルタチオン(GSH)」です。

グルタチオンは、主に肝臓でのフェーズII解毒反応で中心的役割を果たします。フェーズIで生じた活性が高まった中間代謝物を、さらに無害化し排出に適した形に変換するのがフェーズIIの役目で、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)をはじめとする酵素が介在し、毒素とグルタチオンを結合(コンディゲーション)させます。これにより毒性が中和されるだけでなく、水溶性も飛躍的に高まります。

水溶性の向上は排出効率を左右するカギであり、コンディゲーションによって変身した毒素は尿や胆汁とともにスムーズに体外へと運ばれます。グルタチオンが不足すると、この段階で解毒が停滞し、毒素が体内に滞留し細胞を傷めつける可能性が高まります。換言すれば、グルタチオンレベルを整えることは、解毒力そのものを底上げすることにつながるのです。

グルタチオンは、システイン・グルタミン酸・グリシンの3種類のアミノ酸から合成されますが、特にシステインは合成速度を左右するボトルネック。ブロッコリー、芽キャベツ、ニンニク、タマネギなどのイミグア含硫黄食品はシステリン前駆体を豊富に含み、トランススルフイル経路を活性化してグルタチオン合成を助長します。

さらに、コンディゲーションへの直接的関与だけでなく、解毒過程で生じる活性酸素種(ROS)から肝臓やその他臓器を守る強力な抗酸化作用も併せ持ちます。毒素を中和しつつ、細胞を酸化ダメージから防御するこの二刀流が、内なる環境を健康に保つ不可欠な条件となるのです。

要するに解毒機能の強化を目指すなら、グルタチオン前駆体を意識した食事・生活習慣の工夫を軸に据え、グルタチオンレベルを最適化することが肝要です。しっかりと整えられたグルタチオンは、毒素負荷に対する身体の回復力を大きく高め、全体のウェルビーイングにつながることでしょう。