心血管機能を年齢とともに維持することは極めて重要である。その中で「血管石灰化」、すなわちカルシウム沈着による血管壁の硬化は加齢変化として動脈の柔軟性を失わせ、さまざまな循環器リスクを呼び起こす。この深刻な変化を抑える鍵として、天然植物由来成分のフィセチンに期待が集まっている。

ストロベリーやリンゴに多く含まれる黄色色素・フラボノイド「フィセチン」は、高い抗酸化作用と抗炎症作用で知られる。酸化ストレスと慢性炎症こそが血管へのダメージ、とりわけ石灰化を促す主犯であり、ここにフィセチンの効果が注目される所以だ。

最近の基礎研究が「フィセチンの血管石灰化抑制効果」に焦点を当てている。実験ではフィセチンを投与することで、動脈壁の重要構成細胞である血管平滑筋細胞(VSMC)におけるカルシウム沈着マーカーの発現が減少した。通常、プロ石灰化ストレスを受けるとVSMCは類骨芽細胞様へと分化し、カルシウム塩を沈着させて血管を硬直させるが、フィセチンがこの転換を阻害したのだ。

メカニズムは、石灰化を促進するp38 MAPKシグナル伝達系と、その負制御因子DUSP1に介在することに由来する。フィセチンがDUSP1発現を向上させることでp38活性を抑制し、血管細胞の柔軟性を保つ結果となった。これは石灰化を根本的に抑制する分子標的アプローチと評価できる。

今回の知見は、加齢や慢性腎臓病を抱える高リスク層に特に重きをなす。将来的な臨床応用にはさらなる検証が必要だが、フィセチンは「加齢血管損傷の進行遅延・予防」を目指す新たな戦略候補として浮上している。

以上より、「フィセチンの抗酸化・抗炎症プロファイル」が血管石灰化の根幹メカニズムに作用するという点は、心血管ウェルネス維持における天然化合物の活用を広げる有力な証左となるだろう。

まとめると、フィセチンは抗酸化・抗炎症に加え、特定のシグナル伝達系を標的化できる唯一無二の天然化合物として、動脈硬化をはじめとする心血管ダメージの予防に向けた将来研究の中核を担う可能性を秘めている。