イベルメクチンは、見過ごされがちな熱帯病(NTDs)に対する世界規模の取り組みにおいてなくてはならない存在となり、風土病地域の公衆衛生を劇的に改善してきた。広範囲に及ぶ寄生虫駆除作用と優れた安全性を武器に、世界各地で展開される大規模集団投薬(MDA)プログラムの要となっている。

イベルメクチンのNTDsに対するインパクトは、オンコセルカ症(川失明症)とリンパ系フィラリア症の制圧に最も顕著に表れる。これらの感染症はフィラリアの成虫が引き起こし、人々に重度な外見変化や障害、さらに社会経済的打撃をもたらす。イベルメクチンの大規模投与によって有病率と感染伝播は大幅に低下し、罹患地域住民の生活の質は画期的に向上した。

寄生虫に対するイベルメクチンの治療効果を支えるのは、マイクロフィラリア(フィラリアの幼虫)のみならず成虫にも一定の効果を示す点にある。この寄生サイクルを断ち切る機序は、線虫類の神経と筋機能を破綻させる独自の作用メカニズムによる。

人の健康だけでなく、イベルメクチンは獣医療でも家畜の寄生虫駆除に用いられ、家畜の健康管理と食料安全保障に寄与している。牛や羊の胃腸線虫への効果は、畜産業の経済的損失予防に直結する。

資源が限られた地域でも普及する理由は、イベルメクチンが高くて手に入りにくい治療薬ではないことにある。現地の保健スタッフが確実に運用できるよう、化学的特性と安全性プロファイルは詳細に文書化され、治療量であれば副作用も少ないことから地域住民の受け入れ度も高い。

まとめると、イベルメクチンは人と動物の双方の生活を改善する「両用医薬品」として、世界保健の要所で確固たる役割を果たす存在へと成長した。