土に生息する真菌が生み出した物質が、皮膚科治療から農作物保護まで幅広く貢献するまでの軌跡——それがグリセオフルビンの物語です。1930年代にPenicillium griseofulvumというカビから単離されたグリセオフルビンは、世界初の経口抗真菌薬の一つとして登場しました。天然物創薬の可能性を示す代表的なケーススタディとして、いまだに研究と実用の場で注目されています。

医薬品としての分類では、グリセオフルビンは抗真菌性抗生物質に属します。作用の本質は、真菌由来のチュブリンに結合して微小管の重合を阻害することにより、有糸分裂を停止させ菌の増殖を封じ込める点にあります。皮膚糸状菌（皮膚・毛髪・爪を破壊する真菌）に対して高い選択毒性を示すため、白癬治療の第一選択薬として長年使用されてきました。また、ケラチン前駆細胞にも作用し、新生部が真菌の二次感染から守られるという特性が治療効果の持続に一役買っています。

薬学研究者にとって、グリセオフルビンの作用機序メカニズムは研究の宝庫です。分子レベルで解き明かされた選択性は、次世代抗真菌薬の創出に向けたターゲット設計のヒントをもたらします。ただし、カンジダ属やアスペルギルス属など非皮膚糸状菌には殆ど効果を示さないため、スペクトラムを正確に理解することが臨床成功のカギとなります。

原料薬（API）の観点では、グリセオフルビンは依然として高い需要を誇る重要な化合物です。寧波イノファームケム株式会社は、医療用だけでなく農業用途も見据えた安定的な供給体制を構築。GMP準拠の厳格な品質管理の下、高純度APIを市場に届けています。

さらに注目すべきは農業分野での活用です。土壌病害や作物表面の真菌感染を防除する剤としても実績があり、医療・農薬の“越境”活用を可能にした数少ない化合物の一つとなっています。人の爪を守るグリセオフルビン抗真菌治療も、稲や果樹の保護も、同じファイトアレキシンの力に依存している点は興味深い共通項です。