糖尿病などの慢性疾患で腎不全と心不全が重なるケースは決して珍しくありません。このようなカルディオ・レナル領域において、当初は腎保護効果で知られた非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンが、心血管アウトカムの改善にも大きな可能性を示し始めています。

ミネラルコルチコイド受容体(MR)は腎臓だけでなく心血管系でも炎症や線維化、心筋肥厚を促進し、心機能低下へとつながります。フィネレノンはこのMRを選択的に遮断することで、こうした病態プロセスに介入。心臓においても線維化と炎症を抑制し、実質的な心筋保護効果をもたらします。フィネレノンの心血管作用メカニズムは腎での恩恵と同じく、根本的な機能障害の原因を標的に据えています。

フィデリオ-DKDやフィガロ-DKDといった大規模臨床試験は、もともと腎エンドポイント評価が主目的でしたが、副次的解析により心血管死亡・非致死的急性心筋梗塞・心不全入院を含む主要心血管イベント(MACE)の大幅な減少が認められました。この結果は腎と心を同時に守る統合的アプローチの実現を示唆しています。

保存期駆出率心不全(HFpEF)における使用拡大も注目されます。既存試験のサブグループ解析では基礎疾患を抱える患者層で有益な傾向があり、専用試験であるFINEARTS-HF 研究もLVEF≥40%の心不全患者を対象にした効果・安全性を検証中です。現行治療では選択肢が限られるHFpEFに対するフィネレノンの役割が明確になれば、画期的な治療戦略が可能となります。

既存MRAに比べフィネレノンの安全性プロファイルは大幅に向上し、高カリウム血症リスクが低減。長期的かつ継続的な投与が可能になるため、カルディオ・レナル疾患の管理に真に実用的な選択肢と言えます。

まとめると、フィネレノンは腎・心をともにケアする画期的な治療薬として台頭。2型糖尿病患者やCKDを背景にした複雑なカルディオ・レナル領域で、予後とQOLの改善へとつながる将来が期待されています。