ビタミンB12の活性型であるメコバラミンは、日本人にも馴染み深い「メコバラミン剤」の主成分として知られ、末梢神経障害や腰痛症などの治療に広く用いられています。最新の基礎研究および臨床試験がその分子メカニズムを詳細に解き明かし、神経再生と疼痛制御に関する画期的な成果を示しています。

分子レベルでの主な働きは、ホモシステインをメチオニンに変換するメチル基伝達です。この反応で生じるS-アデノシルメチオニン（SAMe）は体内の多様なメチル化反応の基質となり、DNA合成や神経伝達物質の生成、そして神経軸索を包むミエリン鞘の形成を支えます。

特筆すべきは神経修復過程に果たす役割です。メコバラミンはERKやAktといったシグナル経路を活性化させ、ダメージを受けた神経細胞の軸索伸展と生存を促進します。またシュワン細胞に作用し、ミエリン化を阻害するErk1/2経路を抑制する一方、ミエリン基本タンパク（MBP）の発現を高め髄鞘再生を加速します。その結果、神経伝導速度の回復と機能的改善が達成されます。

慢性末梢神経障害性疼痛に対する効果も確認されています。メコバラミンはサイトカイン（TNF-α、IL-6など）の産生を調節し神経炎症を静めるとともに、神経細胞のイオンチャネル活性を変化させ異常興奮を抑制することで疼痛信号を減衰させます。

糖尿病患者の糖尿病性末梢神経障害や帯状疱疹後神経痛を対象とした治験では、疼痛の軽減、神経伝導速度の向上、QOLの改善が有意に認められました。安全性プロファイルも良好で、国内の長期投与実績が信頼性を裏付けています。

こうした科学的エビデンスにより、メコバラミンは「ビタミン補給」という枠を超え、神経疾患治療において根幹的な役割を担う医薬品として確固たる地位を築いています。