抗うつ薬として高い評価を得るビラゾドン塩酸塩は、患者の安全性と治療効果を最大化するため、薬剤間相互作用や必要な予防策を正確に把握することが不可欠です。その薬理作用を踏まえた注意点をまとめました。

なかでも重要度が高いのが、MAOI(モノアミンオキシダーゼ阻害薬)との併用です。イソカルボキサジド、リネゾリド、セレギリンなどのMAOIと同時投与は原則禁忌で、セロトニン症候群(興奮、意識混濁、頻脈、痙攣など)を引き起こす危険があります。MAOI切り替え時は、最低2週間の休薬期間(ウォッシュアウト期間)が推奨されます。

セロトニン濃度に影響するその他の医薬品との相互作用にも留意が必要です。ミグライン治療薬(トリプタン系)、併用されるSSRI・SNRI、リチウム、フェンタニル、セント・ジョーンズワートやアンフェタミンなどは、セロトニン症候群のリスクを高めるため、併用患者では継続的なモニタリングが必須です。投与量調整や代替療法の検討も検討要素となります。

出血リスクにも注意が必要です。ワルファリンなど抗凝固薬、アスピリンやNSAIDsなどの血小板機能抑制薬との併用は皮下出血や消化管出血を増大させ得るため、併用前に必ず医療機関へ自己服用中の全ての薬剤・サプリメントを申告してください。

その他の主な予防策として、若年成人での自殺念慮・行動の増加報告があります。患者本人はもちろん、家族・介護者も心情や行動の変化を速やかに医療チームへ伝えることが大切です。また、飲酒は中枢抑制作用を増強し、眠気やめまいの悪化をもたらすため、飲酒は控えめにするか避けるべきです。

さらに、医師の指示のない急激な中止は離脱症状を招くため、段階的な減量が通常推奨されます。ビラゾドン塩酸塩のAPI製造・流通に携わる製薬各社は、これら相互作用と注意点をわかりやすく詳細に示した情報提供を継続することで、薬の安全使用を支える責任を果たしています。