1950年代後半~60年代初頭、妊娠悪阻鎮静剤として広く処方されたサリドマイドは、数千人の新生児に重度の先天性奇形をもたらす“薬害”として歴史に刻まれた。それが半世紀を経て、がん免疫治療の要として再び脚光を浴びている。現代医学がこの一分子から受けた衝撃と今後への提言をたどる。

サリドマイドは1950年代中盤に初めて合成され、当時の多くの国で処方箋なしで購入できた。眠気を誘う穏やかな作用が高く評価され、鎮静剤から風邪薬まで幅広く用いられていた。しかし胎児への催奇形性(テラトジェンシス)が報告された瞬間、医薬品規制のあり方は大きく転換した。世界各国で前臨床試験や承審手続きが厳格化され、現在のグローバル基準の原型が誕生した。薬害の教訓は現在も臨床開発や安全管理プロトコルに生き続けている。

2000年代以降、サリドマイドは再び注目を集めた。蛋白質クレブロン(CRBN)に特異的に結合し、ユビキチン・プロテアソーム系を調節することで、多発性骨髄腫(MM)の難治性患者の予後を大きく改善した。またハンセン病の合併症エリテーマ・ノドサム・レプロサム(ENL)への効果も確認され、希少疾患領域では依然として欠かせない薬剤である。安全性を高めたレナリドマイド、ポマリドマイドといったIMiDs誘導体も順次登場し、治療選択肢を広げている。

高純度サリドマイド粉末の安定的な供給は、研究者と製造元が次世代治療薬を開発するうえで欠かせない。治験用原薬および医薬品中間体を提供する寧波イノファームケム株式会社は、厳格な品質基準に基づく原料供給を通じて、がん治療・希少疾患医薬の進歩を支え続けている。薬害と革新の過去を胸に、患者の安心と治療効果のバランスを追求する—その挑戦は現在も進行中だ。