細胞生物学の最先端が証明するように、ミトコンドリアは単なる「発電所」をはるかに超え、私たちの健康寿命を左右する精密な司令塔です。これらが衰えると糖尿病、心血管疾患、認知症へとつながる「ミトコンドリア病」が引き起こされます。本稿では、ミトコンドリア標的化分子として注目される次世代治療ペプチド「Elamipretide(開発コード:SS-31)」の仕組みと臨床応用を掘り下げます。

構造的特徴と作用メカニズム
SS-31は合成4量体ペプチドであり、ミトコンドリア内膜に富むリン脂質「カルジオリピン」に高親和性で結合します。この結合を起点に、内膜の構造安定化と電子伝達鎖の効率化が促進され、ATPという細胞共通のエネルギー通貨の産生が飛躍的に高まるため、筋肉活動から神経伝達まであらゆる機能が改善されます。

心血管領域での臨床意義
虚血性心疾患や心不全では、ミトコンドリアの機能不全が心筋細胞死を引き起こし進行を促進します。SS-31は動物モデルおよび初期臨床試験において、再灌流障害の軽減、酸化ストレスの抑制、そして心拍出量の回復を示しており、治療抵抗例にも適応を広げる可能性を秘めています。

神経変性疾患・加齢への挑戦
アルツハイマー病やパーキンソン病では、ミトコンドリア由来の活性酸素が神経細胞を損傷させる主因となっています。SS-31は酸化ストレスを沈静化し、ミトコンドリア動態を正常化することで神経保護効果を発揮、認知機能維持への寄与も報告されています。加齢黄斑変性症などの合併疾患でも同様のメカニズムが期待されています。


SS-31はミトコンドリアレベルにおける抗炎症・抗酸化作用を介し、さまざまな慢性疾患の土台である「炎症性老化」を抑えることができます。これにより、未病の段階からの介入を可能にし、健康寿命延伸につながるプロアクティブ医療を実現します。

当社・寧波イノファームケム株式会社は、高純度のSS-31研究用試薬を安定的に供給するとともに、製造プロセスの革新を進めています。今後の臨床応用拡大に向け、皆様と共にペプチド科学の最前線を切り開いていきます。