肥満と2型糖尿病の治療に効果的な新薬を求める中、エリーライリーの開発したレタトルチドが特に注目されています。この候補ペプチドは、GLP-1・GIP・グルカゴンという3つのホルモン受容体を同時に標的化する画期的な三重作動メカニズムを備えており、従来薬を超える体重減少と総合的な代謝改善が期待されています。

セマグルチドなど従来のGLP-1受容体作動薬は、食欲を抑制し胃排出を遅らせることで体重管理に革命をもたらしました。さらに、チルゼパチドはGIP受容体も併せて活性化させて満腹感と代謝効率を高めました。レタトルチドはこの流れを踏襲し、さらにグルカゴン受容体の活性化を追加。グルカゴンは血糖恒常性とエネルギー消費に関わり、脂肪分解を促進し、低血糖リスクを軽減する可能性があります。

3つの経路を同時に狙うシナジー効果が臨床成績に直結すると考えられています。試験では既存の二重作動薬を上回る大幅な体重減少が報告され、試験参加者は食欲の顕著抑制とインスリン感受性の改善を認めました。肥満だけでなく2型糖尿病の集約的管理に強力な一手となる可能性を示しています。

レタトルチドの意義は減量に留まりません。エネルギー収支に関わる複数のホルモン信号に同時に働きかけることで、より包括的なメタボリックヘルスを目指します。臨床開発は最終段階ですが、作用機序に基づく科学研究は生活習慣病への薬物治療の新基準を生む可能性を宿しています。