マズデュタイドは体重減少への貢献で高く評価されているが、それ以上に注目すべきは、心臓・代謝に関わる幅広い健康効果である。イノベント・バイオロジクス社とイーライ・リリー社が共同開発したこのGLP-1受容体／GCGRデュアルアゴニストは、複数の互いに関連する健康指標を同時に改善し、患者のQOLを総合的に向上させる。

作用メカニズムの中心には、食欲抑制とエネルギー消費増加による体重減少がある。しかし体重計の数字にとどまらず、臨床試験では肥満やメタボリックシンドローム患者によくみられる心臓・代謝指標の改善が繰り返し確認されている。

最も顕著な変化の一つが体組成の改善だ。心血管リスクと強く関連する内臓脂肪を減少させ、ウエスト周囲径の縮小へと結びつける。内臓脂肪の減少は心血管イベントや糖尿病併発症リスクの低下でも知られている。

また、血圧への効果も明確である。用量依存的に収縮期・拡張期血圧を下げることが報告されており、肥満に合併しやすい高血圧の管理に有益だ。これにより、患者全体の心血管リスクプロファイルが改善される。

脂質プロファイルの改善も見逃せない。総コレステロール、LDLコレステロール、トリグリセライドをそれぞれ減少させることで、動脈硬化の進展を抑制し、心筋梗塞や脳卒中リスクを低下させる。

さらに肝臓ヘルスへの効果も期待されている。メタボリック機能障害関連脂肪肝疾患（MAFLD）を有する患者では、肝脂肪含有量の有意な減少が認められている。放置すれば肝線維化へ進行しうる脂肪肝に対して、早期介入の切り札となる可能性がある。

体重、内臓脂肪、血圧、脂質、肝脂肪という五つの要因を一挙に改善するマズデュタイドは、肥満および関連代謝疾患の治療における包括ソリューションとしての地位を確立しつつある。長期的な健康転帰を改善し、慢性疾患による社会負担を軽減する革新的アプローチとして、統合型メタボリックケアの新基準を築く。