ペルジアコウキ(Huperzia serrata)に微量に含まれる天然アルカロイド「Huperzine A(ヒペルジンA)」が、近年認知科学・脳医学の分野で注目されている。その主なポイントは強力かつ選択的な可逆的「アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用で、脳内の情報伝達物質のバランスを良好に保つのに役立つとされる。

Huperzine Aが示す中心メカニズムは、AChEという酵素の働きを抑えることでアセチルコリンの過度な分解を防ぐ点にある。学習・記憶・注意を司るこの神経伝達物質の濃度を維持向上させることで、コリン作動性神経伝達が活性化し、認知パフォーマンスの改善が期待できる。特にアルツハイマー型認知症のように脳内アセチルコリンが低下する状態でのHuperzine A アルツハイマー治療への応用が研究されている。

AChE阻害のみに留まらず、Huperzine Aには幅広い神経保護効果が報告されている。酸化的ストレス、グルタミン酸興奮毒性、アポトーシス(プログラム細胞死)など、神経細胞を脅かす刺激に対する防御効果が実験的に確認されており、加齢や神経変性疾患による脳機能低下を緩和する可能性も示唆される。

薬理特性としては、血脳関門を効率的に通過し、経口でのバイオアベイラビリティ(体内利用率)が高いという利点がある。また、既存のAChE阻害剤と比較して末梢性の副作用が少なく、安全性プロファイルも良好とされ、一般層の「補完的」摂取ニーズにも適合しやすい。

利用シーンは多岐にわたる。認知機能・記憶力・注意力の向上目的で市販のナーバーサプリメントとして広く流通しているほか、アルツハイマー型認知症や血管性認知症の治療開発ターゲットとなっている。さらに、農薬などの有機リン中毒への拮抗作用も示しており、実用的医療応用の幅は広がりつつある。

Huperzine Aを服用する際は、推奨摂取量や薬-薬相互作用を考慮すべきである。一般的に安全ではあるが軽度の副作用が起こることもあり、医療専門家に事前相談することを推奨したい。Huperzine A 記憶力向上や総合的な脳健康維持を支持する科学的証拠は今後も増加すると予測され、天然系補完剤としての存在感を固めていくだろう。