世界のマラリア治療を変えた「アーテミシニン」——その誕生には、古来の民間療法と最先端科学の融合がありました。

長く発熱を抑える生薬として重宝されてきたキソヨミギク(学名:Artemisia annua)は、20世紀70年代、ベトナム戦争でマラリア薬の需要が急増した際に、中国の科学者チームの焦点となりました。当時、学術面でも名を残す屠呦営(Tu Youyou)氏らが記録に残る伝統知識を丹念に調べ上げるなか、1972年、分子“アーテミシニン”の単離に成功。「天然成分由来の新規抗マラリア薬」という新時代が幕を開けました。

従来薬剤とは異なる作用機序と、既存耐性株にも効く高い速効性で、プラスモディウム・ファルシパラムに対して圧倒的な治療効果を示したアーテミシニン。これをもとに開発されたACT(アーテミシニン配合療法)は、現在でもWHOが推奨する第一選択治療法。アフリカを中心とする高発生国でも治療成績は劇的に改善し、年間数十万の命を救っています。

需要増に対応するため、現在は植物抽出だけでなく、生合成アプローチによるバイオプロセス開発も進展。バイオ反応器での安定的培養生産により、途上国への安価な供給体制が整えられています。

さらなる可能性

  • 抗腫瘍作用の解明によるがん治療応用
  • 自己免疫疾患との闘い
  • その他の寄生虫感染症に対する新規薬剤開発

こうした多様な適応拡大の検討は、アーテミシニンのまだ見ぬ治療価値を開拓する挑戦だと言えるでしょう。

伝統医療の叡智が現代科学と出会い、一つの分子が世界の公衆衛生を塗り替えた物語は、今なお続いています。高純度アーテミシニンを安定的に供給し、研究・製剤化を支える寧波イノファームケム株式会社も、そんな歴史の一翼を担っています。