東京―加齢に伴う細胞の衰えを遅らせるため、科学者たちは細胞内の代謝因子NAD+に注目しています。NAD+はエネルギー生産、DNA修復、長寿タンパク質「サーチュイン」の活性化において欠かせませんが、年代とともに減少し、老化関連疾患と深く関わっています。

この不足を補う救世主として登場したのが、NAD+の直接前駆体であるニコチナミドモノヌクレオチド（NMN）です。サプリメントとして摂取することで、体内のNAD+濃度を効率的に高め、細胞の機能回復が期待できます。

主に動物を用いた前臨床試験では、NMN投与群に代謝機能の改善、運動能力の向上、そして寿命の延伸が報告されています。また、インスリン感受性、筋機能、心血管健康への効果についても早期人試験で着実な成果が示されつつあります。

現在、人での最適投与量と吸収効率を高める投与方法の研究が精力的に進められており、安全性は確認済みですが、長期的な有効性と副作用に関するデータも今後追っていく必要があります。健康寿命を延ばす新たな選択肢として、NMNに関する研究動向に注目が集まっています。