ピランテルパモ酸塩は、消化管内寄生虫感染症の治療に広く用いられている駆虫薬である。主にヒトや動物の腸管内に寄生する線虫類を標的としており、正確な適応や使用上の注意を理解することが安全かつ効果的な治療につながる。

ピランテルパモ酸塩で最も頻用されるのは、蟯虫症（エンテロビアス症）治療である。蟯虫は大腸や直腸に住み、強い肛門部の瘙痒を引き起こすことが多い。本薬は神経筋遮断作用によって虫体を麻痺させ、体外へ排出しやすくする。虫卵の家庭内感染が極めてしやすいため、症状がなくても同居者全員を同時に駆虫することが推奨され、再発のリスクを大幅に低下させる。

さらに、蛔虫症による線虫感染にも応用される。こちらは小腸内に生息する大型線虫で、薬剤による神経伝達阻害を受けると腸管から駆除される。同様の機序で鉤虫症も治療対象となり、腸管粘膜に吸血し貧血を引き起こす鉤虫属による感染に対する選択肢として高い有用性を示す。

投与に際しては、まず用量設定が重要だ。体重別かつ感染症別に算出し、シロップ剤では添付計量器の使い方、チュアブル錠では咀嚼後の飲み込み方を患者に丁寧に説明する。蟯虫症では初回単回投与の2週後に再投与を行い、孵化した幼虫を早期に取り除くプロトコルが一般に推奨される。

禁忌や注意点としては、ピランテルパモ酸塩過敏歴のある患者への使用は避ける。肝代謝を受けるため肝機能低下例では用量調節や用法変更が必要。また、吐き気・下痢・めまい・頭痛などの副作用を事前に伝え、患者が落ち着いて対応できるよう指導する。薬物相互作用としてはテオブロミンの血中濃度上昇が報告されており、併用時は血中濃度モニタリングや用量調節を検討すべきである。

シロップ、チュアブル錠、錠剤など複数の剤形が揃っているため、年齢や飲みやすさに応じて選択できる。薬局や医療機関を通じた確実なアクセス体制が、地域の寄生虫対策の成否を左右する。人医療だけでなく動物医療でも欠かせないピランテルパモ酸塩は、今後も感染管理の中心的駆虫薬として地位を保ち続けるだろう。