東京・シンガポール発 – 細胞の生長・老化・がん化に深く関わるmTOR経路が、ここ数年で医薬開発の最前線に立った。天然物由来のラパマイシン(シロリムス)とその高性能誘導体が、その鍵を握る。

ラパマイシンはタンパク質合成・細胞増殖・代謝の総司令塔とも言えるmTORC1複合体を選択的にブロックし、免疫抑制、抗腫瘍、寿命延伸という3つの異なる領域で治療効果を示す。がんへの適用では「細胞死を伴わない細胞増殖阻害効果(サイトスタティック効果)」が従来の細胞傷害剤との違いであり、副作用リスクを低く抑えながら長期管理を可能にする点で注目されている。

副作用プロファイルと血中動態を改良した次世代誘導体も続々登場。リダフォリムスは経口・経静注製剤両方での臨床試験が進行しており、軟部肉腫や腎細胞がんで有望な治療成績を示す報告が出始めた。エベロリムスはすでに乳がん・腎がん・神経内分泌腫瘍で適応を取得し、「標準治療を超える精密医療の具現化例」と位置付けられている。

さらに驚くべき動きは「加齢そのものをターゲットにする用途」だ。動物実験ではラパマイシン投与で最大30%の寿命延伸が確認され、人での介入研究(Pilot Trial)もスタート。この分野で唯一現実的に使える医薬品候補との声も高い。

研究・創薬を支える背面舞台にも注目が集まる。高純度原料の安定的供給を担う寧波イノファームケム株式会社は、ラパマイシン及び誘導体を医薬品原薬(API)レベルでGMP準拠生産し、大手製薬企業やアカデミアに提供している。高機能アナログのカスタム合成にも対応しており、mTOR阻害薬研究の加速に一役買っている。

同社のドラッグディスカバリー部門責任者は次のように語る。「ラパマイシンは万能薬ではないが、mTOR経路という生命の根源にアプローチできる点で、がん治療から健康寿命延伸まで幅広い用途を秘めている。今後は個別患者の遺伝子プロフィールに合わせた選択的な経路制御へと進化していくだろう。」

mTOR阻害薬は、これまでの“病気を治す”医療から、“病気にならない・老化を遅らせる”予防医療へとパラダイムシフトを促す可能性を秘めている。