東京 – CAS番号89-00-9で示される「2,3-ピリジンジカルボン酸」としても知られるキノリン酸は、医薬・農薬原料を始めとするファインケミカル合成における重要な中間体である。常温では白色ないしわずかに黄みを帯びた結晶性粉末で、高純度（99%超）製品の安定的な供給が可能だ。

融点は188〜190℃で分解し、水や極性有機溶媒に可溶とする性質から、工場段階での取扱いが容易である。製品は原則25kgドラム缶に充填・遮光し、低温乾燥した倉庫へ保管されることで長期品質を担保。企業がキノリン酸を購入する際も、この流通基準によりロット間のばらつきは極めて小さいという。

近年の生産拠点では中国が中心で、寧波イノファームケム株式会社を筆頭に高度かつスケーラブルな化学プラントが稼働。ISO 9001:2015を踏まえた品質管理体制やRoHS指令対応など、国内外の規制要件を先取りする対応が進む。

合成用途として代表的なのは、ナイアシン誘導体や植物成長調整剤の前駆体への転換。また、脳内トリプトファン代謝経路（キヌレニン経路）のダウンストリーム物質として神経科学研究でも注目を集めているが、依然として主要な用途はファインケミカルの「架け橋」である。今後も合成プロセスの省エネ化や純度向上といった技術革新が、世界的な市場での差別化要因となる見込みだ。