私たちが普段自然に飲む「きれいな水」は、実は精巧な化学プロセスの賜物です。その中心に位置するのが、凝集と凝結――そして鍵となる薬品が硫酸アルミニウム(AS)です。どんなに濁った原水でも、AS が関わる二段階の反応を経ることで透き通った水へと生まれ変わります。

第一段階:凝集
原水中に漂う微細なコロイド粒子は表面に負の電荷を帯びており、互いに反発し合うため沈降しにくい状態です。ここにASが投入されると、正に帯電したアルミニウムイオンが負電荷を中和。粒子間の反発力が弱まり、微小な「マイクロフロック」へと一気に凝集します。この工程はわずか数秒〜数分というスピード感で進行します。

第二段階:凝結
生成されたマイクロフロックは、ゆっくりと撹拌されながら衝突・合体を繰り返し、肉眼でも確認できる大きな「フロック」へと成長します。AS はこの際にも活躍し、水中で生成するアルミニウム水酸化物のゼリー状沈殿物が「接着剤」の役割を果たし、より多くの粒子を取り込みます。言わば二つの働きで「濁り」を効率よく「塊」へと昇華させるわけです。

ただし、この一連の反応が最適に機能するには、水質条件の精密管理が欠かせません。pHは概ね5.5~7.5、アルカリ度・水温・ASの注入濃度といったパラメータを逐次調整し続けることで、最大限の清澄効果を引き出せます。条件が外れると、反応効率は急激に低下し、追加の薬品注入など工程調整が必要になります。

こうして巨大化したフロックは、沈殿またはろ過により容易に除去され、その後の塩素消毒工程をより効率的にします。今や上下水道から工業用水まで様々な分野で使われる硫酸アルミニウム水処理は、この繊細かつ高い精度を誇る化学プロセスこそが、安全でおいしい水を届ける最前線であることを示しています。