化粧品や医薬外用品、塗料など幅広い製品で使用される合成防腐剤イソジプロピニル ブチルカルバメート(IPBC)は、極めて高い防カビ・抗菌効果を誇る一方、繰り返し塗布することで接触皮膚炎を引き起こす可能性があることが報告されています。本稿では外用製品へのIPBC配合について、規制動向や適切な使用濃度、敏感肌対応の要点、塗料・木材保護剤用途への展開を整理します。

米国化粧品成分レビュー(CIR)など国際評価機関は、化粧品におけるIPBC含有量を0.1%までとする厳格な上限値を設けています。これは、IPBCを長期かつ高濃度で使用した場合に現れるアレルギー反応リスクを最小限に抑えるためです。ただし、既存の皮膚トラブルを抱える方やアレルギー体質の方は、低濃度でも症状が現れることもあるため、個別の体質確認が必要です。

製品開発に携わる企業は、IPBC単体ではなくブレンド防腐システムを採用し、気化リスクを回避することで安全性を高めています。さらに、スプレー式製品への直接使用は避けるほか、容器や外箱にINCI名を明記するなど、消費者への情報開示が求められます。

一方で、消費者も製品選びの際、成分表示に「Iodopropynyl Butylcarbamate」の表記があるかを確認し、敏感肌の場合は皮膚科と相談のうえパッチテストを受けることが推奨されます。また、IPBCを避ける選択肢として、フェノエタノールや安息香酸ナトリウムなどの代替防腐剤を配合した製品を探してもよいでしょう。

今後も、IPBCの優れた効果とアレルギー課題を両立させるためには、規制当局、企業、消費者の三者が情報共有しながら「適切量・適切用途」の考え方を定着させることが不可欠です。