工業用途での強力な還元能でよく知られながら、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(別名:ライコール)にはもう一つの顔がある。医薬品分野において、それは酸化による主薬(API)の劣化を防ぐ重要な抗酸化剤として静かに活用されている。近年、投与直前まで効力を維持しなければならない抗体医薬品や遺伝子治療薬が増加するなか、APIの酸化安定性は製品開発のカギとなっている。

ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムは、遊離ラジカルを捕捉し連鎖酸化反応を断ち切ることで、酸化デグラデーションを抑制する。水に対する高い溶解性と、特定pH域での化学的安定性により、注射剤、経口液剤、点滴製剤など多彩な剤形に組み込みやすい。さらに、過剰配合量を抑えられるため、最終製品の品質リスクが最小限に留まることも期待される。製造段階から薬局・病院での最終手元まで、品質が確実に維持されることから、製薬企業は高付加価値製品の開発を迅速に進められる。医薬品グレードのヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを安定的に供給できる原材料メーカーの存在も、この剤形アプローチを現実にする重要なファクターだ。