紙製品への世界的な需要増は、製紙業に対してより持続可能かつ高効率な製造プロセスの導入を迫っています。その中で、ポリアクリルアミド(PAM)は、パルプ繊維や充填剤の樹脂保持性能を高め、脱水を促進し、工場内での水の再利用率を大幅に向上させるキーアディティブとして注目されています。

抄紙工程では、パルプ繊維・充填材・アディティブをいかに多くシート内に「止めて」用いるかが、製品品質とコスト競争力の両面で極めて重要です。しかし、不透明性や表面平滑性向上に寄与する微細フィラーは、ワイヤ部での脱水過程で流失しやすく、原料歩留まりの低下に加え排水のSS負荷増という環境面の課題も招きます。

これに対して、特にカチオン性ポリアクリルアミド(CPAM)は微粒子同士をブリッジし、より大きなフロックを形成。これらを長繊維に付着させることで、ワイヤ上での保持率を飛躍的に高めます。保持率の向上は以下のメリットをもたらします。

  • 原料歩留まりアップ: 流失量が減るため、単位生産コストが改善。
  • 紙質の均質化: フィラー・微細成分の固定により、不透明性・白色度・印刷適性が向上。
  • 排水負荷の軽減: SSが減るため、後段の廃水処理の負担・薬品コストを削減。

続いて「脱水」とは、パルプスラリー内の自由水をワイヤ上でどれだけ速く除去できるかを指し、マシンスピードの向上直結項目となります。PAMは繊維を疎な構造へ凝集させることで水通過性を高め、次の効果をもたらします。

  • 高速化対応: 脱水時間短縮により生産能力向上。
  • 省エネ貢献: 初期含水率低下でゆえ乾燥部のエネルギー削減。
  • 均一なシート形成: マルキ付きが抑制され、紙質が安定。

製紙プロセスの持続可能性を左右するもう一つの要因は、使用水の最小化と排水ロス削減です。PAMはホワイト水の凝集処理により、その中の微細フィバー・フィラーを回収し工程へ再循環させます。これにより、新規清水取り込み量を減らし、最終排出水量も引き下げる両利点が得られます。

用途ごとの最適化のため、PAMは分子量・電荷密度をバランスよく設計されたグレードがラインナップされており、パルプ種・配合原料・目標紙種・マシンコンディションに応じてカスタマイズ選択が可能です。

総じてポリアクリルアミドは、紙の品質向上と製造効率・環境性能を両立する不可欠なケミカルソリューションです。今後さらなるグリーンパッケージングや循環型産業の要求が高まる中で、PAMは持続可能な製紙を実現する要として、今後も進化を続けることでしょう。