陽イオン性ポリアクリルアミド(CPAM)は、汚泥脱水プロセスにおいて圧倒的な実績を誇る高分子フロック剤であり、上下水道・工業用水処理の幅広い分野で採用されています。分子鎖に沿って配置された正の帯電官能基が、汚泥や排水に含まれる負電荷の微粒子・コロイドと強固に結合する点が最大の特長です。

CPAMが最も活躍するのは汚泥脱水工程です。下水処理や産業廃水処理では、大量の余剰汚泥が発生しますが、これは脱水処理を施すことで体積・重量を大幅に削減できます。有機性汚泥、微生物フロックなどは表面が負に帯電しており、CPAMの正電荷によって電荷中和と架橋が同時に進行。機械的な遠心沈殿機、ベルトプレス、フィルタープレスなどにかける際、大きく強固なフロックが速やかに遊離水分を放出し、含水率の低い脱水ケーキを得られます。適切な製品を選定すれば、固体回収率の向上と残留水分率の低減を両立できます。

脱水以外にもCPAMは、一般排水・産業廃水の凝集沈殿処理で活用可能です。懸濁粒子や有機物を効率的に除去し、濁度低下・水質向上を実現。製紙業界では、紙料の「パルプや充填剤」保持・濾水性を高める「レテンションエイド/ドレナージエイド」として品質向上と原料ロス削減に貢献しています。

CPAMの性能は、陽イオン性ポリマーの「荷電密度」と「分子量」で決まります。荷電密度が高いほど負電荷との結合が強く、分子量が大きいほど架橋効果が高まり、沈降性に優れた大型フロックが形成されます。最適な製品は処理対象の汚泥性状・水質によって異なるため、ラボ・ベンチスケールでのジャーテストによる選定が欠かせません。

これまで見てきたように、CPAMは汚泥脱水から工業排水処理、さらには製紙プロセス効率化まで、多様な用途に対応する「環境×生産性の両立」を実現するキーマテリアルです。今後も排水規制強化やバイオマス利用拡大を背景に、その役割はますます重要になっていくでしょう。