石油化学からファインケミカルまで、産業の要となる改質プロセスでは、不純物に過敏な白金族触媒が広く使われている。硫黄は代表的な触媒毒だが、ひとたび混入すれば寿命を短縮し、収率も大きく低下する。近年、硫黄に加えてひ素や塩素も同時に捕捉できる「保護用脱硫剤」が注目されている。

多くの現場で採用されているのは、ニッケルと銅を主活性成分とし、特殊アルミナを担体とした粒状製品。硫化水素など無機硫黄はもちろん、頑固な有機硫黄化合物の除去も可能で、改質炉へ導入される原料の純度を大幅に高める。特に加熱される前の低温〜中温域で、微細な金属表面に硫黄を選択吸着するため、後段で使用する高価な貴金属触媒を“予防的”にガードできる点が大きな特徴だ。

さらに、原料に混入しがちなひ素や塩素も同時に不活化。白金原子と強固に結合し活性点を失活させるこれらの元素を、事前に排除することで、触媒寿命は従来比30～50％延長が報告されている。これにより定期交換頻度を下げられ、装置稼働率の向上とランニングコスト削減が両立する。

工業炉内では機械的摩擦や圧力変動に耐えうる高強度粒子設計が求められる。今回紹介した製品は粉砕しにくく、微粉化トラブルを未然に防ぐとともに、充填・交換が簡便で運転員の負担も少ない。既設装置への追加設置も配管数本の変更で済むため短期間で対応可能だ。

脱硫戦略の見直しを検討する企業は、高強度脱硫剤による運転安定化や、ひ素・塩素を同時除去する予備精製といった観点で製品選定を進めると効果的だ。導入事例を見ると、装置の歩留向上と環境規制への早期適合が同時に実現しており、保護用脱硫剤は「改質プロセスを支える隠し味」と評価されている。