製紙と鉱業は業界的に差は大きいものの、双方とも「工程最適化のための化学ソリューション」を強く求めている。ポリアクリルアミド(PAM)エマルションは、その多様な特性を活かし、両分野で欠かせない存在となっている。本稿では陰イオン、陽イオン、非イオン型のPAMエマルションが具体的にどのように現場で用いられ、どんな効果を上げているのかを事例とともに解説する。

製紙工程におけるPAMエマルションの活用

紙の製造には複数の工程があり、その多くにおいてPAMエマルションが品質向上と生産効率化の要になっている。繊維・フィラー・水の三者の相互作用をコントロールする力が、高品位な製品を高速で生み出す鍵だ。

陽イオンPAMによる「留着力」と「紙力」向上

陽イオン型PAMエマルションは、マイナス電荷を帯びたセルロース繊維やフィラーと電気的に結合し、次の効果をもたらす。

  • 留着力の強化:微細繊維やフィラーの滅失を防ぎ、原料歩留まりを向上させ紙質を均一化する。
  • 紙力の増大:繊維間結合を強化し、引張・破裂強度などの諸強度がアップする。
  • ドレナージの高速化:抄紙機内での脱水速度が上がるため乾燥時間が短縮され、エネルギー削減にも貢献する。

このように陽イオンPAMエマルションは、製品品質と生産性を同時に押し上ける。

鉱業現場におけるPAMエマルションの活用

鉱業では、鉱石処理や鉱山排水処理の過程で「固液分離」の精度が事業の要となる。PAMエマルションは、それを飛躍的に効率化する役割を担う。

陰イオン・非イオンPAMで鉱石分離と鉱滓管理も最適化

鉱山では主に陰イオン型・非イオン型PAMエマルションが以下のように活用される。

  • 鉱物処理:浮選工程において、PAMは凝集剤あるいは抑制剤として作用し、価値ある鉱物と脈石との選択的な分離を助ける。陰イオン型PAMは微細粒子の効率的な凝集に優れる。
  • 鉱滓(テール)管理:鉱滓の安定貯留や体積削減に向け、PAMエマルションによる脱水濃縮が施される。結果として水も回収可能となり、現場の水循環量が増える。
  • 排水処理:鉱山排水に含まれる懸濁物質や有害成分を凝集沈殿させ、排出水基準への適合を実現する。

使用するPAMの種類は、精鉱の表面性状と工程条件に応じて柔軟に選択される。

まとめ

ポリアクリルアミドエマルションは、いまや製紙/鉱業両方に欠かせない「工程の要」。留着力・紙力向上、鉱物分離・テール管理をはじめとした幅広い用途をカバーし、生産性向上と環境負荷低減の両立を可能にしている。陰イオン・陽イオン・非イオンの特性を理解し適材適所で活用することが、これらの産業の次なる飛躍につながる。