現代の水浄化プロセスにおいて欠かせない逆浸透(RO)は、高度な純水を各種産業や家庭用途へ確実に供給する中心的技術である。その性能と膜寿命はフィード水質と前処理の出来映えに左右されるが、特に深刻な脅威となるのがスケール析出だ。スケールが膜面に堆積すると透水量低下、圧力上昇、エネルギー増費、早期の膜交換といった悪影響が連鎖する。こうした課題を一手に解決するのが、ポリアミノポリエーテルメチレンホスホン酸(通称:PAPEMP)という最新のフォスフォン酸系スケール抑制剤である。

PAPEMPは、RO装置で頻繁に遭遇する炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのスケール生成を強力にブロックする。分子設計の特徴は極めて高いカルシウム耐力にあり、硬水/微塩水といった高硬度原水でも自己析出を起こすことなく安定作用を維持できる。そのため、前処理工程への投入が容易で運用負荷も小さい。

作用メカニズムは閾値抑制と粒子分散の二本立てだ。PAPEMP分子はスケール核の成長点に選択的に吸着し、結晶格子を歪めて核のさらなる肥大を防ぐ。さらに、すでに生成した微粒子も高い分散能で水中に保持し、膜面への付着を実質ゼロに近づける。特筆すべきはシリカスケールに対する抑制効果であり、不可逆な膜フーリングを回避する上で大きなアドバンテージを提供する。

ROシステムのスケール抑制剤として使用する際は、PAPEMPを膜到達前のフィードラインに注入する。原液濃度や原水質、運転条件に応じて5–100 mg/L程度が標準用量である。薬剤投入によって透過回収率を高め、薥洗頻度を大幅に削減できるため、ランニングコストの低減と膜交換サイクルの延伸両面で効果を実感できる。

従来のEDTAやNTAといったキレート剤と比較しても、高温・高pH領域での活性維持、不要な金属錯体形成の抑制、ポリマーや分散剤との相乗配合しやすさといった点で優位に立つ。総合的に、PAPEMP導入はROシステムの信頼性強化と水質向上を両立する戦略的投資と言える。