東京 – 従来は消化器領域における胆汁分泌促進薬として利用されてきたアジンタミド(CAS 1830-32-6)に、皮膚科学の舞台で注目の光が当たっている。最新の基礎研究により、難治性乾癬(ぬれかび)のような慢性炎症性皮膚疾患への適応可能性が浮上した。

乾癬は自己免疫によって角質形成細胞の増殖が異常亢進し、銀白色の鱗屑を伴う紅斑が全身に出現する。従来はステロイド外用薬や生物学的製剤による炎症抑制が主だが、全例に効果が得られるわけではない。

こうした現状を受け、アジンタミドの「炎症経路への介入」が研究の焦点だ。炎症シグナル伝達分子を介した細胞内シグナル網の抑制作用によって、過剰な免疫応答を鎮める機序が確認され始めている。まだ作用機序の詳細は解明中だが、特にTh17系サイトカインネットワークへの影響が強く示唆されている。

既に国内外の製薬企業・大学が共同で in vitro スクリーニングや動物モデルを進めており、現時点で良好な安全性プロファイルも報告されている。市販APIの高純度品を確実に確保できることで、今後はフェーズ I/II 臨床試験へとステップアップする見込みだ。

もし実用化されれば、副作用リスクを抑えながら乾癬患者に新たな治療選択肢を与えるだけでなく、銀屑病関節炎など関連疾患への応用も期待される。消化器用医薬品の「転用法」により、皮膚科領域の創薬パラダイムシフトを促す可能性を秘めている。