「詰め替えてみたけど合わない……」そんな悩みを抱えるユーザーの多くは、成分表示を隅から隅まで読み始める。そこで目に留まるのが「アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム(Sodium C14-16 Olefin Sulfonate、通称AOS)」という名称だ。シンプルな表記こそ多いが、その存在感は大きく、現代ヘアケアにおける洗浄性能と使い心地のバランスを左右するキープレーヤーとなっている。

AOSとは何か?

CAS番号68439-57-6に分類されるAOSは、代表的なアニオン系界面活性剤。界面活性剤の役割は水と油とのなじみを高め、毛髪や頭皮に付着した皮脂・スタイリング剤・細かいホコリなどを洗い流しやすくすること。AOSはその構造ゆえに洗浄力と泡立ちに優れながら、肌や頭皮への刺激を抑える“マイルドさ”でも知られている。

一般的なシャンプーに用いられるSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)やSLES(ラウレス硫酸ナトリウム)と比較すると、乾燥やかゆみを誘発しにくく、敏感肌用製品やベビーシャンプーにも採用実績がある点が大きな特徴だ。

AOSがもたらす5つの付加価値

  • 高い洗浄力:余分な皮脂やスタイリング剤残滓をすっきりオフして、次のケアステップの土台を整える。
  • 贅沢な泡立ち:きめ細やかでクリーミーな泡が指通りを滑らかにし、洗髪体験そのものを快適にアップデート。
  • 低刺激性:他のスルホン酸系界面活性剤と比べて頭皮へのダメージを抑え、乾燥や赤みのリスクを軽減する。
  • 生分解性:自然環境に配慮した設計で、排出後も迅速に分解。サステナブルな原料として各社が注目。
  • 硬水耐性:カルシウムやマグネシウムが多い硬水地域でも泡立ちや洗浄効果が落ちにくく、旅行先でも安心。

以上のバランスのよさは、フォミュレーターがAOSを「プライマリーサーファクタント(主洗浄成分)」として据える最大の理由だ。

液状タイプと粉末タイプの使い分け

現行の製造ラインでは、常温で直接混合できる液状AOSが圧倒的に多い。一方、ドライシャンプーや粉末オイルシャンプーの開発時には、計量しやすい粉末AOSが選ばれるケースもある。どちらも同一成分でありながら、製品コンセプトに応じた最適形態を選択できる点も利点だ。

結局のところ、AOSは「キレイに落とす」「泡立ちが良い」「頭皮に優しい」「環境負荷が小さい」という相反しがちな要望を高い次元で叶える。だからこそ、日本国内外のブランドが高付加価値シャンプー開発で優先して手がける成分なのである。