フードやスキンケア業界で長年使われてきた合成酸化防止剤「BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)」。油脂の酸化やカビ・悪臭の防止に優れた効果を示す一方で、その安全性は各国で議論が交わされ続けている。

BHAの強みは、油脂中で発生するフリーラジカルを素早く捕捉し、酸敗を防ぐ働きにある。穀物スナックや脂溶性ビタミンを含む化粧品など、保存期間の延長が求められる幅広い製品で活用されている。

ただし、製造現場で「使い続けてよいのか」を問う声が強まっている。アメリカFDAは食品添加物としての使用許可を維持する一方、動物実験での発がん性示唆データを受けて、一部の研究機関・公益団体は容認量の再評価を求めている。こうしたBHAに対する安全性懸念は、消費者にとっても無視できないテーマとなっている。

天然由来への置き換え需要は高まりを見せ、ビタミンE(トコフェロール)やローズマリー抽出物に代表される植物系酸化防止剤が実用段階に入った。クリーンラベル志向の高まりを受けて、大手食品・化粧品メーカーは既存処方からの段階的脱BHAを進めている。今後BHAの代替候補は、性能面・価格面でのさらなる改良が期待される。

BHAに関する真実を理解するには、「便利な保存料」という利点と「健康リスクが完全否定できない」という不安の両方を天秤にかける必要がある。規制も研究も終わりなき進化を続けており、天然代替技術の成熟はメーカー・消費者双方に選択肢を与えている。

結論として、BHAは高い機能性を持つ保存成分である一方、安全性への疑念と天然代替技術の台頭がその行方を大きく左右する。今後の市場は「製品品質」と「安心・安全」、どちらを優先させるかが決め手となるだろう。