化学名:2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール — 通称「ブロノポール」は、バクテリアや真菌に対して強力な抗菌作用を発揮する有機化合物として、化粧品・医薬品をはじめ、工業プロセスまで幅広く活用されている。製品保存性向上とともに製造・使用時の安全性確保のために、その基本特性と最適な取扱条件を正確に把握することが不可欠だ。

外観は白色~淡黄色の結晶~結晶性粉末で、製造ロットによりわずかな色調差が生じることがある(鉄キレートの影響)。融点は約130 °Cだが、結晶多形の存在により測定値が揺れることがある点に注意が必要である。極性溶媒(水・メタノール・エタノール・イソプロパノール)への溶解性が高く、一方で非極性溶媒には不溶。水性系処方ではスムーズな配合が可能である。ブロノポールの物性データは各種技術資料で詳細に公開されており、処方設計における選択指標になる。

その圧倒的な特徴は広スペクトルな抗菌力である。グラム陰性菌代表株ブドウ球菌以外の Pseudomonas aeruginosaや真菌・酵母まで効果を示すため、化粧品やトイレタリー、医薬外用製剤に保存料として配合される。製品の微生物汚染に起因する品質劣化や使用時の健康リスクを確実に回避できることから、規制厳格な海外市場向け製品でも採用実績が高い。また、産業用途では冷却水系、製紙工場、採油プロセス、金属加工油などにおいて微生物異常繁殖(スライム・腐食・作業効率低下)の抑制剤として不可欠な役割を果たしている。2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの応用例は日々拡大し続けている。

取扱いに際して留意すべき点もある。常温常圧では比較的安定だが、強アルカリ条件や高温では分解してホルムアルデヒドや亜硝酸塩を遊離するおそれがある。このため、ブロノポール処方設計ガイドラインでは、水性相への早期添加と40 °C以下への工程温度管理が推奨される。また、pH は微酸性~中性に保ち、配合相手成分との相互作用(特に二次アミンとのアルカリ条件でのニトロソアミン生成可能性)を事前に検証することが安全法規上の大前提になっている。

作用機序は、酵素蛋白質のチオール基を架橋・不活化させることで微生物の増殖を阻止するという明快なメカニズムを持つ。ブロノポール 抗菌剤としての信頼性は、Pseudomonas 属などの難治菌に対する最新データとの照合により高まっている。適正濃度+適切な配合環境を守れば、あらゆるセクターで効果的かつ安全に貢献し続けるブロノポール。そのノウハウを組織的に活用することが、製品競争力向上と規制コンプライアンスを両立する鍵である。