化粧品・製造業界で働くプロフェッショナルの皆様へ――原料の徹底理解は製品品質に直結します。今回は、合成保存料として幅広く用いられるイソプロピルパラベン(CAS番号:4191-73-5)に焦点を当て、その化学的特性と具体的な用途・今後の可能性を解説します。

分子式C₁₀H₁₂O₃、分子量180.2。白色の結晶性粉末であるため、配合工程での取り扱いが容易です。熱履歴に左右されにくく、融点84–86℃、減圧下(5 mmHg)での沸点160℃と示すように、各種プロセスにおいて高い熱安定性を確保できます。

最大の特長は「抗菌スペクトラムの広さ」にあり。グラム陽性菌・陰性菌をはじめ真菌類まで効率的に抑制し、化粧品の品質保持期間を伸ばす。近年のパラベン系化合物への安全性議論を背景に、使用濃度や併用設計の最適化が進む一方、コストパフォーマンスは依然として評価が高く、スキンケアからヘアケアまで幅広く採用されています。

供給面でも高純度白色粉末の安定的な流通体制が整い、海外APIメーカーからの調達に加え、国内拠点での在庫保有も進んでいます。用途は化粧品防腐に留まらず、医薬中間体としての新規合成ルート研究、さらには食品用途の規制適応調査なども進行中です。サプライチェーンの要として、イソプロピルパラベンが果たす役割は今後も拡大すると見込まれます。