電機、自動車、住宅建材など安全性能が求められる分野では、高性能な難燃剤の需要が急増している。その中で注目を集めるのが、アルミニウムジエチルホスフィネート(ADP)だ。ハロゲンフリーでありながら高い難燃効果を示すADPの反応メカニズムを理解することで、ポリアミド、PBT、エポキシなどのエンジニアリングプラスチックのさらなる安全性向上が図れる。

ADPは「縮相」と呼ばれる固体材料側と「気相」と呼ばれる火炎内という2つの局面で働く。この2段階の作用が点火防止・延焼抑制に高い相乗効果をもたらす。

縮相メカニズム – カーチャーフィルムによる遮熱

加熱されるとADPは熱分解し、リン種を放出。これらがポリマー鎖と反応して脱水・架橋を促進し、表面に緻密な炭化層(チャー層)を形成する。このチャー層が果たす役割は3つある。

  • 断熱シールド: 基材への熱伝達を大幅に遅延し、熱分解速度を抑制。
  • 酸素遮断: 可燃性ガスの酸素供給を阻害し燃焼継続を困難に。
  • 燃料供給の抑制: チャー層が蓋となり、ポリマーから火炎部への可燃性ガスの放出を防御。

このチャー層形成こそがADPの難燃性能の根幹となる。

気相メカニズム – ラジカル捕捉効果

ADPは熱分解過程で揮発性リン化合物(例:ジエチルホスフィン酸)を放出し、これらが火炎中の高エネルギー遊離基(H・、OH・)を捕捉する。火炎伝播は遊離基連鎖反応で進行することが知られており、リン種は次のように遊離基を不活性化させる。

  • P化合物 + H・ → PH + •O
  • P化合物 + OH・ → PO + H₂O

連鎖反応の中断により発熱量と火炎強度が減衰。気相でのラジカル捕集作用と縮相でのチャー層形成が複合的に働くことで、UL 94 V-0など厳しい火災安全規格への適合が可能になる。

まとめ

ADPはカーチャー層による物理遮断と気相自由基捕捉の“デュアルメカニズム”により、高効率かつ環境負荷の低い難燃性能を実現。また、ハロゲンを含まないため燃焼時にダイオキシンやコラスガスといった有毒ハロゲン化副生成物が出にくい。高純度ADPを安定的に供給する寧波イノファームケム株式会社の支援を得て、各メーカーはさらに安全で信頼性の高い難燃製品の開発を加速できるはずだ。